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回想のゲーム黄金時代(1)はじめに

はじめに

 

『セガハードヒストリア』(SBクリエイティブ)の制作にあたって、当時のことを聞きたいのでヒアリングさせてほしいという依頼があった。2時間近く話したが、それまで忘れていたことをいろいろと思い出した。個人的な話題もあり、話したことをそのまま使用することはないということだった。いい機会なので、思い出したことを忘れないうちにどこかで書いてみようと思った。

 

ゲーム雑誌の編集者としてゲームビジネスに関わっていた1980年代後半から1990年代にかけてはゲーム黄金時代といってもいいような、ゲーム業界全体が躍動的で、業界に関わる人たちのワクワク感が溢れていた時代だった。

 

誰かは忘れてしまったが、「ユーザーにあっと驚いてもらえるようなゲームを作りたい」と言っていたことを覚えている。自分が作ったゲームが100万本売れるとか、有名クリエイターになりたいではなく。

 

そんな気持ちで仕事をしていた業界人は多かったのではないか。「驚いてもらえる」より「売り上げ」がどちらかというと優先されがちな今とは隔世の感があるが、ゲームが産業になって間もないころの話だ。

 

その背景には、1980年から1990年代にかけての急速なコンピュータ技術の進歩、1990年初頭までの土地、証券の投機が経済に波及していったバブル景気があり、我々出版業界もその恩恵を被っていた。実際情報誌やコミック誌、ファッション誌など相次いで創刊されていた。

 

その中でビデオゲームは、新たなビジネスとしてとして市場規模を拡大していたが、日本のゲーム産業に活気があったのは、国産ゲーム機が次々と世界のゲームソフト(アプリ)のプラットフォームとなり、それとともに日本のゲームがどんどん世界進出できたからだろう。

 

このようなゲームが産業として整備されていく時期を勝手に「ゲーム黄金時代」と名付け、その中で起こった様々な出来事のあれこれを自分の経験を元に書いてみようと思う。